ドキュメンタリー・情報番組を中心に

株式会社クリエイティブネクサス

株式会社 クリエイティブ ネクサス

映画・ドラマも手がける映像プロダクション

ドキュメンタリー・情報番組を中心に映画・ドラマも手がけます

  • 佐藤ディレクター

街で「人の人生を聞く」というコト。

私は、NHK BSプレミアム「ガイロク(街録)」という番組を担当しています。街で偶然出会った人々に人生のエピソードを伺うという内容です。

「街録って、大変そう…」と思う方がいると思いますが、「おっしゃる通り、とっても大変です。」
暑い日も寒い日も街角に立ち続け、声をかけ続けても、なかなか止まってもらえない、立ちっぱなしなので、足はパンパン…まるで修行みたいです。
でも、それ以上に得るものがたくさんあって、何よりどん底だった私を救ってくれた恩人のような番組なんです。

去年、個人的にピンチなことがあり…(説明するとすごーく長くなるので割愛しますね)まあ、完全にディレクターとして自信喪失中でした。
そんな時、プロデューサーから「人生最大のピンチというテーマでインタビューするから、佐藤 行ってみる?」という感じで、ピンチな私はロケにでることになったのです。

「こんな私に人生の話なんてしてくれるんだろうか…」何もかもが駄目だと思っていた私は、はっきり言ってポジティブな気持ちにはなれませんでした。声をかけても「時間がない」「仕事中なんで」「大丈夫です」「……。(無視)」 50人くらい声をかけ続け、「いいですよ」と言われ、飛び上がるほど嬉しかったのを覚えています。

「あなたの人生最大のピンチを教えてください。」

その人が話してくれたのは、「突然病に倒れ、将来に絶望した」という経験でした。経緯や当時の状況、その時の気持ち…目に涙を浮かべ話す彼女の姿にインタビューのことを忘れて夢中になって話を聞いていました。
気づいたら50分近く時間が経っていました。
彼女がつらい経験を乗り越えて、前を向いている姿に、「人間の強さ」を感じ、「私のピンチって全然たいしたことないじゃない。私も頑張んなきゃ。」と答えをだせず同じところをぐるぐる回っていた私が、少し前を向くことができたのです。

「ありがとうございました。」

話し終わった彼女は、晴れやかな笑顔で去っていきました。
つい数分前には、目に涙を浮かべていたというのに…。その姿に「話を聞く意味」を考えさせられました。
もしかして、「見ず知らずの人に自分の過去を話すこと」で気持ちが楽になるのではないか。「相手に寄り添い話を聞くこと」が、ちょっとかもしれないけど、その人の役に立つのではないか…。

「私が街角に立ち続ける理由」

佐藤ディレクター02

そんな思いを抱えながら取材をしていたある日、子供を突然亡くしたお話をしてくださった方がいました。正直、「この話を聞き続けていいのだろうか、聞くことで相手を傷つけてしまったらどうしよう…」と一瞬怖気づきました。でも、話してくれている人は、もっと勇気がいると思ったんです。だから怖気づくなんてもってのほか、その言葉の一つ一つを大切にしたいと思いました。

放送後、その方からお手紙を頂きました。番組の感想とともに「ありがとうござました」と添えられていました。その言葉が、私がやっていることを肯定してくれたように思えました。
まだ、「話を聞き続ける意味」の結論は出ていませんが、これからも話を聞き続ける覚悟ができました。
そして、みなさんが勇気を持って話してくださった大切な言葉を視聴者に届けることで、私が励まされたように「明日も頑張ろう」と思ってもらえたらと思っています。

最後になりましたが、
テレビのお仕事は、思っているより大変かもしれません。
でも、これだけは言えます。
私は、この「ガイロク」という番組を通じて、いろいろな人と出会い、話をすることで、自分も成長できました。本当にこの番組に出会えてよかったし、携われていることが幸せです。
…そんな経験できるのは、この仕事の醍醐味かもしれません。

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